データから見る京都観光の現状と満足度の実態

UPDATE :
2019. 09. 02

SUMMARY

観光入込客数は3年連続で減少となりましたが、宿泊客比率の拡大によって延べ滞在客数は横ばいで推移しており、京都市人口の約15%もの人数が京都に滞在する状態は続いています。外国人客からの愛着度は高水準が維持される一方で、日本人客からの愛着度は伸び悩んでおり、これを改善するためには「癒し」の体験が重要です。一方、観光に対する市民感情は悪化傾向にあるものの、肯定的な意見のほうが多い状態は維持されています。

この記事は、2019年7月25日に広報発表した「京都観光総合調査等を活用した京都観光の最新動向詳細分析結果について」に関する内容を、4回に分けて解説する連載記事です。

延べ滞在人数は横ばいで推移

毎年、京都市が発表する京都観光総合調査の平成30年(2018年)分の結果によると、京都市における観光入込客数(以下、入洛客数とする)は、5,275万人と3年連続で減少となりました。かつて入洛客数5,000万人を達成するという構想が掲げられ、平成20年(2008年)にこれを達成して以降、リーマンショック等の特殊事情を除けば5,000万人超は維持されています。

ただし、この入洛客数は実人数であり、一人あたりの滞在日数を考慮した数値ではありません。たとえば、1人の観光客が京都で1泊すると京都市内での滞在はおよそ2日間とみなすことができるため(チェックアウト後も京都市内に滞在することが前提)、実人数では1人であっても滞在日数では2人日ということになります。つまり、この延べ滞在客数のほうが京都市内の観光客数の体感値と整合すると考えられます。延べ滞在客数を算出する方法は以下の図のとおりで、入洛客数と延べ宿泊数を合計することで求められます。

京都市では、平成27年(2015年)から延べ宿泊数を発表しているので、平成27年(2015年)から延べ滞在客数を算出することができます。その結果、平成30年(2018年)の延べ滞在客数は7,818.7万人となります。これを365日で割ると、一日あたりの滞在人数は約21.4万人となります。京都市の人口は約147万人なので、人口の約15%もの人数が毎日京都に滞在していることになります。

延べ滞在客数の推移を見てみると、この4年間でほぼ横ばい、もしくは微増しています。また、その内訳を見ると、日帰り客数が減る一方で宿泊客数による滞在が伸びていることも分かり、観光客の質が変化してきていることが伺えます。

京都観光総合調査における観光客数は、様々なデータをもとに推計を行ったものであり、全ての観光客の動向を厳密にカウントしたものではありません。そこで、比較対象として各運輸機関の一日あたり乗降客数のデータについても確認してみましょう。

京都市内の延べ滞在客数は、2017年から2018年にかけて0.2%と微増しました。ところが、首都圏方面からの入洛客が利用する東海道新幹線は、前年比3.0%と大幅に成長しています。逆に、在来線や私鉄各社の定期外乗降客数は前年比減となりました(通学・通勤客は定期利用が一般的であるため、定期外利用を観光目的とみなす)。これらのデータは京都市外の沿線の乗降客数も含んだ数値であることや、2018年の度重なる災害の影響を受けていることには留意が必要ですが、首都圏からの流入が増え、近畿圏からの流入が減ったということは、宿泊客が増加し日帰り客が減少していることと整合することになります。

また、ここで注目したいのが、京都市バスと市営地下鉄の利用者数です。京都市バスの利用者数が2.8%減少する一方で、市営地下鉄は1.3%の増加となっています。これは、昨年4月にバス一日乗車券の料金が500円から600円に引き上げられ、地下鉄・バス一日乗車券の料金が1,200円から900円に引き下げられたことが影響していると考えられます。一部の路線で車内の混雑が課題となっている市バスから、地下鉄へ需要が分散されたことは、料金改定による成果といえます。

宿泊客数が増加している背景には、市内の宿泊施設数の増加があります。数年前まで約3万室であった客室数が、現在は4万室を突破しており、今後のホテル建設計画をもとにすると、東京オリンピック・パラリンピックを迎える来年には5万室を超えることが予想されます。

京都観光総合調査では、京都市内で宿泊しなかった回答者に対してその理由を聞いており、回答選択肢として「宿泊施設を予約できなかったから」という項目があります。平成28年(2016年)までは、この回答率が15%を超えていますが、平成29年(2017年)を機に10%を下回っていることから、近年の客室数増加によって予約困難な状況が解消され、これまで取りこぼしていた需要の回収ができるようになったと考えられます。

日本人観光客からの愛着度を高めるためには「癒し」が重要

さて、ここまでは需要と供給の量的なバランスについてみてきました。次に、質的な面について確認してみましょう。京都観光を親しい友人に勧めたいと思うかどうかについての回答結果をもとに集計される、観光客の京都に対する愛着度を把握するための指標NPS(Net Promoter Score)は、外国人客は53.0(前年比2.0ポイント増)と、3年振りに増加となりました。一方で、日本人客は16.7(前年比2.9ポイント減)と、2年連続の減少となりました。外国人観光客による愛着度は極めて高い水準が維持されていますが、日本人については伸び悩みを見せており、より一層の高みを目指すためには競合との差別化が求められるでしょう。

愛着度を向上させるためには、観光客の思い出に残るような体験を通して満足感を与える必要があります。京都観光総合調査では、細かい項目ごとに満足度を測定しているため、京都観光全体の満足度に影響する要素を下記のとおり可視化することができます。

その結果、日本人は「癒やし」を重視すること、「交通渋滞」に対する満足度が相対的に低いことに特徴があることが分かります。外国人客は「街の清潔さ」に対する満足度が高いこと、「芸術」や「夜観光」に対する満足度が相対的に低いことに特徴があることが分かります。質の高い観光の実現に向けては、これらの項目の充実や強化が求められることになります。

京都の観光を持続可能なものとするためには、観光客だけでなく市民の満足度も高める必要があります。京都市では市民生活実感調査を毎年実施しており、京都観光に関する意向を把握することができます。

「京都は観光客にとって質の高い観光都市である」という問いに対しては前年とほぼ同じ結果となり、高い水準でシビックプライド(市民の誇り)が維持されていることが確認できました。また、「京都は市民にとってくらしやすい観光都市である」という問いに対する指標は前年から微減となりましたが、どちらかというと肯定的な意見のほうが多い状態は維持されています。

こうした指標の動きを踏まえつつ、一部の観光地での混雑やマナー違反などによる住民生活への影響の実態把握を進め、着実な対策を講じ指標の改善を図っていくことが、持続可能な観光地経営の実現には不可欠です。

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PROFILE

プロフィール

堀江 卓矢 ほりえ たくや

京都市観光協会 マーケティング課 DMO企画・マーケティング専門官

1988年 京都市左京区出身。
京都大学大学院 農学研究科 修士課程修了。
2012年(株)三菱総合研究所 入社。
LCC(格安航空会社)就航に伴う経済効果分析、
東京都における観光戦略策定およびグローバルマーケティング調査、
鉄道各社のコンサルティング業務など、
観光分野を始めとした政策評価や調査業務に従事。
2016年7月から現職。

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マーケティング課 堀江

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