京都観光行動基準(京都観光モラル)

京都市及び公益社団法人京都市観光協会(DMO KYOTO)では、持続可能な観光をこれまで以上に進めていくために、「京都観光行動基準(京都観光モラル)~京都が京都であり続けるために、観光事業者・従事者等、観光客、市民の皆様とともに大切にしていきたいこと~」を策定いたしました。今後、京都観光に関わる全ての皆様が、お互いを尊重しながら、持続可能な京都観光を、ともに創りあげていくことを目指しております。

策定に至った経緯

近年の京都観光は、外国人観光客の急増等により、一部の観光地の混雑や、文化・習慣の違いによるマナー違反等の観光課題が発生し、市民生活にも影響を及ぼす事態が生じていました。

こうした観光課題の解決に向けて取組を進めていた中、本年1月以降の新型コロナウイルス感染症の拡大により、旅行需要が激減するなど、京都観光はかつて経験したことのない危機的な状況に陥っております。また、観光事業者のみならず、関連する産業や文化、芸術の関係者などに与えた影響も甚大で、観光がいかに京都の経済と雇用や地域文化の振興を支えていたかを、改めて認識したところです。

今後、市民及び観光客の皆様の安心・安全の確保を図りながら、一刻も早く京都観光を回復させていくことが必要ですが、それに当たっては、かつて観光課題が発生していた新型コロナウイルス感染症拡大以前の観光に戻すのではなく、観光客の皆様にも京都の魅力をしっかり味わっていただきながら、市民生活や地域文化をより重視し、市民の皆様がより豊かさを実感できる、地域に貢献する観光を目指していく必要があります。

観光事業者・従事者、観光客、市民の皆様が、お互いに尊重しあい、思いを一つにし、かけがえのない京都を未来へと引き継いでいくため、京都観光に関わる全ての皆様に大切にしていただきたいこととして、本行動基準を策定するものです。

なお、昨年12月に京都で開催された「国連観光・文化京都会議2019」においても、観光と文化のより持続的な発展に向け、観光に関わる者の倫理意識を更に高めていくための行動規範の必要性について、その成果文書である「観光・文化京都宣言」にも掲げられています。

理念

平安の都・京都

  • 794年,永遠の平和と安寧への祈りをこめた都が京都に誕生しました。平安京です。
  • 以来,千二百有余年,京都は「平安」を理想とし,その悠久の歴史の中で,山紫水明の美しい自然と,文化,芸術,産業,学問,宗教,それらの根底に連綿と受け継がれている市民の暮らしの美学,生き方の哲学を育んできました。これら京都の有する宝は,日本の宝,世界の宝ともいえます。
  • 文化による世界との交流と平和の実現を「世界文化自由都市宣言」で高らかに掲げ,平和を基調とした都市の営みを続ける京都は,絶えずその「宝」を磨き,輝き続ける世界でも稀有の都市であり,今なお国内外の多くの旅人をひきつけてやみません。

観光の意義

  • 「旅」とは,人に出会い,風景に出会い,心打たれる出来事に出会い,そして新たな自分自身に出会うこと…。人は「旅」を通して,気付き,学び,癒され,元気をもらい,成長し,人生が深く,豊かになります。
  • また,人々の来訪は,地域に活気を与え,暮らしの支えとなり,働く人々や住民の幸せの向上をもたらすとともに,地域の文化や自然,まちなみと調和した魅力的なまちづくりが進展するなど,地域を次世代に維持・継承・発展させる原動力ともなります。
  • そして,人と人とのふれあい,交流により,住民の地域に対する誇り,愛着が育まれるとともに,お互いの地域や国に対する理解が深まり,世界の平和,友好親善につながります。

京都観光と持続可能なまち

  • 京都はこれまでから,国内外の人々に「旅」を提供しつつ,こうした観光が持つ力を活かして,地域経済の活性化を図るとともに,地域の文化や景観,コミュニティの継承・発展に取り組み,また世界の友好親善に貢献してきました。
  • しかし今,少子高齢化や生活様式の変化による文化の担い手不足,地域コミュニティの衰退,地球温暖化,災害等の危機の発生,そして観光客の急増等に伴う混雑やマナー違反など,様々な課題が京都の「宝」を支えてきた地域の暮らしに影響を及ぼしています。
  • 京都を持続可能なまちとするためにも,これらの課題を解決し,京都の「宝」に更なる磨きをかけ,将来に継承しなければなりません。

新たな京都の魅力の創出

  • そして京都は,先人たちが築いてきた伝統を継承し,それらを保存・活用し,常に新しいものに挑戦する進取の精神と国内外の人々との多様な交流により,絶えず新たな「宝」を創造してきました。
  • 観光は京都の「宝」の消費者であってはなりません。これからも,誰しもが責任ある「持続可能な観光」に取り組み,京都を享受し楽しみ,交流を深めることにより高めあい,ともに新たな「宝」を創出していくことが重要です。

策定目的

  • これらを背景に,観光事業者・従事者等,観光客,市民がお互いに尊重しあい,京都が京都であり続けるための「持続可能な観光」を,これまで以上に推進していくために,それぞれの主体に大切にしていただきたいこととして,また市民については,旅行者をあたたかく迎えるなどの京都市市民憲章を具体的に実践するものとして,以下の行動基準を策定します。
  • なお,行政,観光協会等の関係者は,本行動基準に基づいて,様々な取組を行っていくものとします。

行動基準(事業者向け)

市民生活と観光の調和

地域の魅力や,市民生活の豊かさが高まるよう,地域との調和に配慮し,地域文化・コミュニティ・経済の発展に貢献するとともに,観光客に対しても,地域のルールや習慣を伝えていきましょう。

質の高いサービス

観光客が感動し,京都を再び訪れたいと思っていただけるよう,京都の歴史や文化,伝統を学ぶとともに,観光客それぞれの文化や生活習慣をよく理解し,敬い,おもてなしの心でサービス・商品の質を高めていきましょう。

環境・景観の保全

京都の美しい自然やまちなみと地球環境の保全につながるよう,地域の自然環境や景観に配慮するとともに,環境にやさしい事業活動を行いましょう。

災害対応

誰もが安心・安全で過ごせるとともに,事業を継続し,従業員の雇用を維持できるよう,災害や感染症,事故等に注意し,十分に備え適切に行動しましょう。

行動基準(観光客向け)

地域を思いやる

市民の暮らしを敬い,京都の歴史や文化,伝統の継承・発展に貢献できるよう,地域のルールや習慣を尊重して行動しましょう。

環境・美しい街を守る

京都の美しい自然やまちなみと地球環境の保全につながるよう,地域の自然環境や景観に配慮するとともに,環境にやさしい観光を行いましょう。

人とふれあう

京都への来訪が,異なる地域を知り,文化を認め合い,かけがえのない体験となるよう,京都の人々や地域と積極的にふれあうとともに,京都の魅力を伝えていきましょう。

“もしも”に備える

誰もが安心・安全で過ごせるよう,災害や感染症,事故等に注意し,適切に行動しましょう。

優良事例

「京都の風(ふう)を守る」京料理屋が語る持続可能な観光とは

京料理「畑かく」三代目店主 新造  一夫 様

地域の文化を伝える拠点としての老舗旅館の取組

旅館「日昇別荘」女将 田中 美岐 様

インバウンド業で食の多様性に対応してきた経験が、新規事業の成功のカギに

KAMOGAWA BAKERY(ジャパンフードエンターテイメント株式会社)社長 宮澤 心 様

長年の外国人向け事業の実績を活かし、地元向けに英語絵本販売を始めた理由

京都ハンディクラフトセンター(アミタ株式会社)社長 網田 知邦 様

スノーピークが嵯峨嵐山にて“地域に根差した店”を開いた理由とは?

Snow Peak LAND STATION KYOTO ARASHIYAMA(株式会社スノーピーク)副店長 澤奈 央実 様

取組実績

普及啓発ワークショップ

長らく続いた緊急事態宣言が解除され、京都の街にも少しずつ活気が戻ってまいりました。昨年の秋のような賑わいが期待される一方で、新型コロナウイルス感染症の再拡大や混雑、渋滞などの問題が再び起こることを心配する声も聞かれます。そこで京都市観光協会では、コロナ禍以前の京都観光の姿には戻さないようにするために「京都観光行動基準(京都観光モラル)」を2020年11月に京都市と連名で発表し、京都観光に関わる全ての皆様がお互いを尊重しながら持続可能な京都観光をともに創りあげていくことを目指してきました。この「京都観光モラル」では、これまでの観光客に対するマナー啓発とは異なり、観光業界の事業者や従事者、市民のみなさまも含めて、お互いに大切にしたいことを定めて普及・啓発に取り組んでいます。

なかでも、約1,500社の会員事業者を抱える京都市観光協会では業界で働くみなさまを起点に取組を広げることを目指しており、その手始めとして、業界からの有志と京都大学観光MBAの学生をお招きしてワークショップを開催しました。このレポートでは、そのワークショップの第1回目(2021年9月2日開催)の様子をお伝えします。第1回は、オンラインミーティング形式での開催とし、初対面である参加者同士の関係性を築くこと、また京都観光モラルに対する理解を深めていただくくことに焦点を当てました。

京都観光モラルワークショップ(第1回)
~観光モラルについての理解を深める~

京都観光モラルワークショップ(第2回)
~課題解決につながるアイデア出し~

その他の取組

「KYOTO again! ~京のため、明日のためにできること~」キャンペーン

京都市及び京都市観光協会では、持続可能な観光の実現に向けて、市民生活との調和や環境・景観の保全などを記した京都観光行動基準(京都観光モラル)に沿った行動の実践を促進するため、11月1日から市民・観光客を対象に「KYOTO again! ~京のため、明日のためにできること~」キャンペーンを実施します。