新型コロナウイルス感染症防止対策

1.新型コロナウィルス感染症によってもたらされた課題

  • 観光客の量の減少
    4~5月における市内主要ホテルの客室稼働率は、2019年は90%前後であったが、今年は10%以下にまで低下した。
  • 観光客の質の変化
    50%前後で推移していた市内主要ホテルの外国人比率が数パーセントにまで低下しており、当面は地元住民や国内観光客の需要しか期待できない。
  • 各種イベントの中止
    夏の風物詩である祇園祭が58年ぶりに巡行中止になったことをはじめ、京都を代表する数々の行事やイベントが中止となった。

これらの影響に加え、今後は更に以下のような事態が進行する懸念が高まっている。

  • 市内観光産業の縮小
    雇用削減による観光産業からの人材流出と、新規採用活動の停滞による人材バランスの偏りが懸念される。政府や自治体による緊急事態宣言を受けてで多数のホテルや簡易宿所、飲食店などが営業自粛や休業に追い込まれており、今後も同様の状況が続くことで倒産や廃業が相次ぐことが予想される。とくに、交通インフラや大型施設の倒産が発生すると、元の状態に復帰することは極めて困難である。
  • 観光産業に対する市民感情の悪化
    市民が「観光という活動が新型コロナウイルスの感染拡大を助長する」と認識してしまうことにより、観光産業に対する市民感情の悪化が予想される。特に京都においては、新型コロナウイルス感染症の拡大前から、一部の地域や時期における観光需要の集中が市民生活に及ぼす影響が懸念されることがあり、観光へのネガティブな感情が膨らんでしまいやすい雰囲気となっている可能性がある。
  • 観光客と住民のあいだでの感染リスクに対する意識の違いによる衝突
    仮に、ワクチン等の普及が不十分な状態で世界レベルでの観光が再開した場合、感染リスクに対する意識が異なる人々が同じ空間に滞在する状況が生まれることで、新たなトラブルが発生する可能性がある。

これら課題のうち、冒頭の3つの課題は、新型コロナウイルス感染症の拡大状況に大いに影響を受けるものであり、DMOとしてコントロールが難しい場合も多い。そのため、デスティネーションの観光産業の持続可能性を高めるという観点からは、後段の3つのリスクを少しでも減らす取り組みが求められている。

2.これらの課題への対応

このような状況下において、京都市観光協会では、京都観光の持続可能性を高めるために、主に以下の方向性で取り組みを展開している。

ウィズコロナ時代への適応を目指した京都観光におけるロードマップの策定

6月末時点の情勢を踏まえ、京都観光需要の回復に向けたロードマップ

新たなニーズへ対応することの支援に重点を置いた事業を、想定される市場環境の変化に応じて効果的に展開していく構想を発表し、以下の各種事業の方針として掲げるとともに、地域の事業者にとっての目標設定や経営判断の材料として提供した。
ロードマップは、当初の事業方針を見直し、会員・観光事業者が新たなニーズへ対応することの支援に重点を置いたものである。また、ウィズコロナ時代に適応したDMOを体現し、想定される市場環境の変化を整理するため4つの「D」に基づいて事業を展開し、4つの段階に分けた事業スケジュールとなっている。さらに、宿泊客数を一定水準である約25万人泊/月まで回復することを目標に掲げ、外国人観光客に関しては、約20万人泊/月 を当面の目標とした。
昨年度実施した訪問意向調査の結果を踏まえ、「無形の文化資源にまで価値を見出し、新しい体験に投資し、成長を楽しむことを重視する、国内外の旅行者」と想定した。そこに従来の「首都圏や欧米豪を中心とした富裕層」といったターゲットに加えることで、住民生活と調和した観光の実現を目指す。

詳細は、以下のプレスリリース等を参照。
https://www.kyokanko.or.jp/news/20200714/

事業者の持続可能性を高めるための取組

  • 緊急支援助成金制度を創設
    京都市観光協会会員を対象に、施設の消毒や清掃、衛生対策用品の購入などの「感染拡大防止」や、販路開拓、プロモーション・広告などの「回復準備」に要する経費の3分の2以内(1事業者あたり上限20万円)を補助する緊急支援助成金を創設した。
    予想を大きく超える応募があったことから、上記の制度に引き続き、京都市と連携して追加の補助制度も創設。4月以降に実施する新型コロナウイルス感染症予防のための事業や危機的状況を乗り越えるための事業や、回復期を見据えた事業継続に向けた対策等に対し、必要経費の4分の3以内(1事業者あたり上限30万円)を補助。

    詳細は、以下のプレスリリース等を参照。
    https://www.kyokanko.or.jp/news/20200318/

  • 新しい生活スタイル対応のための感染症対策補助金
    市民及び観光客の安心・安全を確保するとともに、感染症対策と経済活動の両立を促進し、感染症予防・拡大防止対策と観光の両立及び市民生活・地域コミュニティと観光の更なる調和を図ることを目的として、京都市内の店舗・事業所等を対象に、新しい生活スタイル対応のための感染症対策に係る経費の一部を補助する制度を創設。

    詳細は、以下のプレスリリース等を参照。
    https://www.kyokanko.or.jp/news/20200819/

  • 市内の観光事業者同士の情報交換プラットフォームの創出(短期的取組)
    緊急時の事業連携や相互相談を促進するために、SNS上にコミュニティを立ち上げ、情報交換などの促進を行った。開始1ケ月程度で300名を超える市内観光事業者が登録し、活発な情報の交換が行われている。
  • 無料オンライン研修を展開(中期的取組)
    新型コロナウイルスの感染拡大防止期間における緊急支援事業として、京都市と連携して観光関連事業者を対象とするオンライン研修(ウェビナー)を公開した。動画は1本30分程度で、観光客減少対策や事業継続計画(BCP)などの経営者向けのものから、デジタル活用や京都観光の基礎知識、衛生対策など、現時点までに30のプログラムを公開しており、内容の拡充を続けている。
    配信内容
    ・収益力アップセミナー(2メニュー)
    ・衛生対策(3メニュー)
    ・観光客減少期対策研修(2メニュー)
    ・事業継続計画(BCP)研修(2メニュー)
    ・デジタル活用研修(2メニュー)
    ・京都観光研修(8メニュー)
    ・初心者向け 外国語研修(8メニュー)       など
    詳細は、以下のプレスリリース等を参照。
    https://www.kyokanko.or.jp/news/20200318_2/

 

  • 事業者のデジタル技術活用を支援するプランを提供(中期的取組)
    新型コロナウイルス感染症と共存する「新しい生活スタイル」にシフトすることが求められていることを受けて、動画配信を利用したイベントやツアー、SNSを活用したファンとのコミュニケーション等、デジタルを活用した取組を支援する。具体的には、デジタルの導入や更なる活用を希望する事業者と、サービスやノウハウを有する事業者をマッチングする窓口を開設して運営している。
    詳細は、以下のプレスリリース等を参照。
    https://www.kyokanko.or.jp/news/20200525/

 

  • 市民向けの魅力再発見・需要喚起キャンペーン(長期的取組)
    市内の観光事業者の売上の増加や雇用の確保につなげるとともに、市民に京都の魅力を再発見いただくことを目的に、飲食・宿泊施設を対象とした市民向けキャンペーン「地元応援!京都で食べよう、泊まろうキャンペーン」を6月19日から開始。約900施設の飲食店、宿泊施設が参加し、人気を博している。
    本施策は、近隣の商圏から観光誘致をはじめることで、感染拡大に対する市民の不安を和らげながら需要を段階的に回復させることを狙った取組である。また、これを機会に、市民が自地域の観光資源を再認識するきっかけを増やし、いずれ観光客が戻ってきたときに観光地としての魅力を一人ひとりが伝えられるようになるという効果も期待できる。
    詳細は、以下のプレスリリース等を参照。
    https://www.kyokanko.or.jp/news/20200618_1/

 

  • 認知継続を目的としたコンテンツ配信(長期的取組)
    世界中の京都ファンに、京都を感じられる動画配信。実際に京都へ足を運ぶことができない京都ファンに向けて、自宅に居ながら京都の美しい風景や歴史、文化の魅力を感じることができる様々なコンテンツ(座禅の体験指南動画や観光事業者からのビデオメッセージ)を「Stay Home, Feel Kyoto」と題してwebサイト上で公開した。詳細は、以下のプレスリリース等を参照。
    https://www.kyokanko.or.jp/news/20200428/
    https://ja.kyoto.travel/news/format.php?id=158

市民の観光に対する安心感を生み出すための取組

  • 新型コロナウイルス感染症に対する注意喚起ピクトグラム等の制作
    衛生管理の徹底をはじめ、感染拡大防止の工夫をしながら営業されている皆様を対象に、就業前の従業員の健康チェックに使っていただける「従業員向け衛生チェックシート」や、感染症拡大防止のためのピクトグラムを配布した。詳細は、以下のプレスリリース等を参照。
    https://www.kyokanko.or.jp/news/20200407_2/

 

  • 新型コロナウイルス感染症の対策ガイドラインの発表(短期的取組)
    京都で観光に携わる23の業界団体と共同で、京都観光における新型コロナウイルス感染対策のガイドライン「より一層『安心・安全』な京都観光を実現するための新型コロナウイルス感染症対策宣言」を作成した。本ガイドラインでは、個別の観光事業者が責任をもって、市民にも安心と安全を提供できる観光を実現していくことを明記しており、観光事業者が中心となって、市民生活と観光の調和を目指すこれからの観光の在り方を示している。これに基づいて、住民、観光客、観光従事者の感染リスクを最小化し、観光客迎え入れに向けて、感染症対策の徹底と京都らしいおもてなしの調和を実現していく。詳細は、以下のプレスリリース等を参照。
    https://www.kyokanko.or.jp/news/20200715/

 

  • ガイドラインを遵守する観光事業者の可視化(中期的取組)
    京都観光協会では今後、このガイドラインの取り組みを進める団体や事業者を増やしていくとともに、住民や観光客に周知を行っていく。具体的には、ガイドラインに賛同する事業者(店舗、サービスなど)に、感染症対策に取り組んでいる店舗であることを示すステッカーを配布し、これを店頭で掲示していただくことで対策状況可視化し、市民の観光事業者における信頼感を高めていくことを目指している。
    詳細は、以下のプレスリリース等を参照。
    https://www.kyokanko.or.jp/news/20200730/

3.期待される結果と目標

主に期待される結果として、以下に挙げるようなことが想定される。

  • 観光事業者における感染症対策の徹底により、安心して楽しむことができる観光地としてのイメージが醸成される。
  • オンライン研修の受講などを通して能力の開発に取り組む事業者が増え、生産性が向上する。
  • 市民が自地域の観光資源を再認識することで、観光産業の重要性に対する理解が高まり、魅力を伝える能力が個人レベルで高まる。
  • 旅マエでの情報発信が強化されたことで、観光客の意識変容を促すことができる場面が増え、今後のプロモーション事業の多角的展開が可能となり、相乗効果が期待できる

各事業の総合的な目標として、以下に挙げる項目を掲げる。

  • ロードマップに従い、需要の回復に応じた適切なタイミングで事業展開をする
  • オンライン研修の利用数を増やし、事業者の能力開発を支援する
  • 市民による観光を促進することを通して、観光に対する市民感情を改善する
  • 旅マエから体験できるコンテンツの閲覧数を増やし、京都の文化に対する理解度を高めた状態で来訪してもらえる人を増やす
  • ガイドラインに賛同する店舗を増やしステッカーの掲示数を増やす
  • ステッカーの実効性を高めるために、ステッカー掲出施設等における、衛生対策の状況を把握できるようにする