「メディア」をテーマに「第4回京都インバウンドカフェ」を開催しました(2023年2月9日(木))

UPDATE :
2023. 05. 10

SUMMARY

MMGY Myriadの調査から、旅行先での関心や情報収集ツールに世代間で大きな違いがあることが示された。旅行に対する思い入れが高まる中、今後のトレンドとしてはサステナブル、真正性、特別感、ウェルネスが挙げられる。メディアについては雑誌のオンライン化が進むと共に、速報性と差別化を意識した短文での情報提供が主流になっている。採用してもらうためにもメディアやジャーナリストと顔が見える関係を築いておくことが重要である。

2023年2月9日(木)、これからのインバウンド向けコンテンツのあり方を考える交流イベント「第4回京都インバウンドカフェ」を開催しました。
まず京都市海外情報拠点(ニューヨーク&ロサンゼルス)の担当者であるMandi Stefanak氏から、アメリカの消費者トレンド、旅行者の情報収集方法、いま注目しているトピック、メディアのトレンドなどについてお話いただきました。その後、京都市観光協会プロモーション担当課長西村や参加者からの質問にお答えいただく形で議論を深めました。

(1)イントロダクション

(2)対談

Mandi Stefanak氏(Myriad/京都市海外情報拠点(ニューヨーク&ロサンゼルス)担当)
京都市観光協会プロモーション担当課長 西村

(3)質疑応答

  • MMGY Myriadは、より効果的な情報発信方法をアドバイスしたり、様々なメディアに情報を取り上げてもらえるようメディアとクライアント(主に国や政府観光局、観光協会など)との間を取り持つ働きをするPR会社(広告代理店とは異なる)である。主に北米において、様々な観光地の宣伝をしたり、観光マーケティング調査などをおこなっている。
  •  まず我々が地域の最新情報を入手した後にメディア向けの情報に加工し、ジャーナリストやメディアと共有する。彼らがその情報に興味を持てば記事や動画等が作成され、メディアに載ることになる。

旅行者の動向や意識 ~世代によって異なる旅行の嗜好性~

  • 当社で毎年行っている調査(MMGY Global’s 2022 Portrait of American International TravelersTM)によると、アメリカの旅行者(過去2年以内に2か所以上海外旅行をした人が対象)はコロナ禍前よりも多くの旅行を計画しており、今後1年間で海外旅行に費やす予算についても増えている。在宅勤務が増え、休暇をとらなくても旅行ができるようになったことは大きな変化である。
  • 世代別にみても特徴が異なる。ミレニアル世代(1981年~1996年生)は平均5.7回の旅行を計画している一方で、1回の旅行で使う予算は$3,564(約47万円)にとどまっている。ベビーブーマー世代(1946~1964年生)の旅行回数は1.5回と少ないが1回の旅行で使う予算は高い($7,725(約102万円))傾向にある。X世代(1965~1980年生)は旅行回数が3.0回と少なく、1回の旅行で使う金額予算も$3,940(約52万円)と少ない。
  • 旅行者にとっての大きな心配事は、荷物の紛失や飛行機遅延などの空港でのトラブル(65%)、自身の安全(63%)、航空運賃や宿泊のコスト(62%)であり、新型コロナウイルスについて(57%)はそれほど懸念されていないことがわかる。旅行先で感染しないかどうかは気にしている人も多いが、日本は感染対策をしっかり行ってきたためその点は心配ないだろう。
  • インフレの影響で旅行に行きづらくなっている面はあるが、旅行に対する意欲が失われている訳ではない。事業者の皆さんにとってはサービスの内容に見合った価格を請求しやすいという良い面もある。
  • アメリカ人旅行者に最も人気が高いのはヨーロッパだが、ミレニアル世代ではヨーロッパに次いで人気が高いのがアジアである。また、北米からの旅行者の多くは、旅行の際に複数の場所を訪れたい(79%)という意識があるため、例えば東京に10日間滞在するような可能性は低い。
  • 新型コロナウイルスによる旅行への影響であるが、高い年齢層では新型コロナウイルスよりも旅行に高い関心を示している。また、全世代に共通して、混雑していない旅行先を選ぶ傾向が高くなっている。
  • 旅行先を決める際のポイントとしては、今まで訪れたことがない地域(82%)、安全な地域(81%)、天候(78%)、お得な情報(77%)、旅行先の利便性(75%)と続く。
  • また、旅行先での関心については世代ごとに異なる。例えば、美しい景観を見ることに対してミレニアル世代の関心は低い(36%)が、ベビーブーマー世代は高くなっている(82%)。歴史的な場所についてもベビーブーマー世代は高い(82%)が、ミレニアル世代の関心は低い(27%)。
  • ミレニアル世代だけでみると、美しい景観を見ること(36%)、レストラン(飲食体験)(34%)、地元ならではの体験(33%)、地元ならではの店での買い物(33%)、水上スポーツ(33%)の順に高い。
  • 食についてはミシュランの星付きレストランや高級レストランより、地元の人が食べているローカルフードへの関心が高い(54%)ことがわかる。

旅行の情報収集方法 ~多様化するSNS~

  • 旅行を計画する際は、まず目的地を決め、旅行タイプを決め、オンライン旅行レビューを参考にした後に予算を決めて具体的な計画をすることが多い。特に旅行情報を入手する際に使われているのがTripAdvisor(37%)、Expedia(35%)、YouTube(33%)、旅行先のwebサイト(29%)、Google Travel(25%)等である。
  • ソーシャルメディアは旅行先の決定において益々重要な役割を占めるようになっており、54%の人が旅行先のソーシャルメディアをフォローしていると回答している。YouTube(33%)が最も人気があり、その次にInstagram(27%)とFacebook(25%)と続く。ただし世代によって好まれるSNSは異なり、高い世代にはFacebookが人気があるが、若い世代にはYouTube、Instagram、Snapchat、Tik Tokなどが人気がある。また、旅行中にSNSで旅行内容を共有するという人の割合も61%となっている。

2023年の旅行トレンド ~キーワードはサステナブル、真正性、特別感、ウェルネス~

  • 「サステナブル」は旅行にとっても重要なテーマである。サステナブルにコミットしていない旅行先や交通機関を避けたと答えている人は48%にものぼる。また、サステナブルを意識し環境対策を実施する事業者に対しては、より高い料金を支払うと回答している人は78%となっている。世代別にみると若い世代ほどその意識が高いこともわかる。
  • コロナの影響で旅行に行けない期間が長かった分、「特別な体験をしたい」、「旅行をすることによって幸せを感じたい」と思っている人が多い。だからこそ、地元の人との交流や、新しい学びが求められている。
  • 2023年のトレンドとして、本物で忘れられない地元主導の体験が求められているということが挙げられる。その背景には、旅行者以上の存在になりたいという想いがある。また、為替の関係で、以前は物価が高くて行きづらかった場所に行く可能性がある。そして、日常生活の疲れをリセットするためのウェルネストラベルが引き続き注目されている。

メディアのトレンド ~オンラインへの移行、速報性と差別化を意識した情報の必要性~

  • メディアについては、雑誌等が印刷をやめ、オンラインに移行している。短い動画コンテンツも制作しているが、インフルエンサーのフォロワー数などをあまり気にせず、ニッチな人やテーマに焦点を当てるようになっている。
  • 広告とオウンドメディアの線引きが曖昧になってきていることも特徴である。北米ではプレスリリースは一般的ではなく、非常にタイムリーかつ大きなニュースの際にしか出されない。日常のちょっとした情報であればピッチングという短文のメールで共有することが多い。ただ、ジャーナリストは世界中から毎日200通以上のメールが送られてくるため、ジャーナリストといかに強固な人間関係を構築できるかが重要である。
  • グローバルメディアの変化も激しい。例えば「Condé Nast Traveler」は北米で最も人気のある雑誌の一つだが、アメリカとイギリスの出版物を統合した。2つのニュースルームを統合し、よりグローバルなものにしようとしている。
  • 今後メディアとの関係性を築いていく上では、メディア向けのプレストリップを実施することや、「なぜ今なのか」「何が新しいのか」「何が他と異なるか」という点を常に意識すること、マス向けの情報よりもレアな情報であること、Podcastやソーシャルメディア、動画などプレスリリースの枠を超えた様々な媒体にまたがって発信すること、速報性がありタイムリーであること等が重要になる。その上で、絶え間なく変化するメディア環境に対応していくこと、主要なメディアや業界の専門家との関わりを作っておくこと、様々なパートナーと連携して刺激的で革新的な体験コンテンツを開発すること、真正性のあるメッセージとコンテンツによって京都のブランドイメージを守っていくことが求められる。

開催後、参加者の皆様からは、

「自分では接点を持つことができないスピーカーの方のお話で非常に勉強になりました。」
「アメリカでも年代別にリーチ方法が変わることがわかり良かったです。」
「特にこれからのトレンドを知ることができて良かった。」

といった感想をいただきました。

引き続き「京都インバウンドカフェ」にご注目ください。

※日本円は2023年2月9日換算(1$132円)

CONTACT

本件に関する問い合わせ先

公益社団法人京都市観光協会 企画推進課 マーケティング担当

075-213-0070

marketing@kyokanko.or.jp

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