富裕層をテーマに「第3回京都インバウンドカフェ」を開催しました(2022年12月21日(水))

UPDATE :
2023. 01. 20

SUMMARY

富裕層の受け入れにあたっては、柔軟な対応に欠ける施設が多いこと、英語対応可能な施設が少ないこと、素晴らしい資源が多い一方で見せ方やアプローチに問題が多いこと等が指摘されました。コンシェルジュが顧客のあらゆる要望に応えるためには、実現が難しい場合の代案をどれだけ用意できるかが重要であり、そのためには体験を提供する事業者側からコンシェルジュへ提案できる関係づくりが課題であると言えそうです。

2022年12月21日(水)、これからのインバウンド向けコンテンツのあり方を考える交流イベント「第3回京都インバウンドカフェ」を開催しました。
まず、事務局から富裕層の定義や最新の調査結果等について情報提供をおこなった後、国内外のラグジュアリーホテルでコンシェルジュとしてご活躍されてきたお2人の対談へと移りました。
対談では、いわゆる富裕層の旅行形態をはじめ、富裕層の方々が感じていらっしゃる京都の魅力、お2人が手掛けられてきた体験プログラム等をご紹介いただいた後、富裕層の受け入れにあたっての課題についてお話いただきました。
後半のグループディスカッションでは、富裕層を迎え入れていくにあたり、自身の施設やサービスにおける課題を抽出し、グループ内で共有していただきました。

(1)イントロダクション

(2)対談

「京都へのまなざし ~富裕層の視点と京都の課題~」
田中 英司 氏(ROKU KYOTO, LXR Hotels & Resortsチーフコンシェルジュ)
小山 明美 氏(KYOTO CONCIERGE SERVICE)

(3)グループディスカッション

1.対談

富裕層の旅行形態 

  • 自分(田中氏)がロンドンのホテルにいた時は、中東のお客様が避暑や買い物、体験目的でよく訪れていた。彼らは予約をせずに来て、1泊100万円のスイートルームに家族で滞在する。電化製品や車まで持ち込み、夜に遊んで昼は休む生活をする。そして、明日帰るのでプライベートジェットを予約してほしいと前日に言われる。
  • 私(小山氏)はこれまで、中東、米国、欧州、アジアなど様々な国の富裕層の方をお迎えしてきた。有名な起業家の他、今年に入ってからある国の国王の友人などの対応もおこなった。
  • 中東のお客様は考え方が異なるため、食事面はもちろんのこと、どなたに話しかけるかも含めて気を遣わなければならない。

富裕層の方々の要望と対応 

  • 京都はいわゆる「The JAPAN」であり、富裕層の方にとっても人生で一度は訪れてみたい憧れの場所である。街全体が博物館のようで、近代的な街並みの中に急に歴史的な場所が現れるという意味でもインパクトがあると捉えられている。
  • 一方で、富裕層の旺盛な好奇心や要望に対する受け入れ態勢が整っているかと言われると追いついていない部分が多いように感じる。例えば、夜は店が早く閉まってしまうし、お客様が夜遅くに京都に着いた時に0:00でも開けてくれる店はなかなかない。
  • 我々コンシェルジュは、顧客からの要望があれば、たとえ心当たりが無くてもまずは「もちろんです」と答えて、開けてくれる店を探すことになる。しかしながら、何かお願いしようとすると、紹介者が必要なことが多く、スピード感も遅い。要望に応えられない場合は、代案を用意することになるため、どれだけ引き出しを用意しておけるかが重要になる。そのため、もっと事業者の皆様からも提案をしていただけると嬉しい。
  • 海外のお客様はエスプレッソが好きな方が多いが、メニューにないからといって出そうとしない店も多い。決まりを守ることが第一になっており、現場スタッフがクリエイティブに考えようとしない傾向にある。
  • 素晴らしいものはたくさんあるのに、その見せ方があからさまで、チラシを作ったり、看板を立てたりしてしまうことで価値が台無しになってしまう。そこにたどり着くための過程も大事で、いかにもTouristic(観光客向け)な雰囲気にならないようにする必要がある。
  • 顧客からの質問や要望が届いてから4時間以内に返信するようにしているが、各施設のwebサイトの英語対応が遅れているので、返信に時間がかかってしまう。英語サイトがあればそのリンクを伝えるだけで済むが、日本語サイトしかない場合はこちらで翻訳して伝えなければならない。

ホテルのアクティビティの特徴

  • 我々としては、唯一無二の体験を提供することで忘れられない思い出を作っていただきたいという想いがあり、開業準備中はひたすらアクティビティを作っていた。
  • たとえば、当ホテルは、日本で最初に和紙が作られたと言われる紙屋川(天神川)が流れる鷹峯に立地している。そのストーリーを活かし、紙屋川の水、京都産の雁皮を使って行う紙漉き体験を企画した。また、その講師として、職人ではなくアーティストを起用することで、他のアクティビティとの差別化を行っている。
  • ポピュラーになりつつある金継ぎ体験も行っているが、我々はホテルで壊れたものを捨てずに保管しておき、その金継ぎ体験をお客様にしていただいている。また、京唐紙体験の提供にあたっては、コンシェルジュ全員が職人から訓練を受けてお客様にレクチャーできるようにした。
  • リッツカールトン京都の場合、エグゼクティブ層は運動をすることが好きな人が多いので、上級者用のハイキングコースや、素晴らしい環境を体験できるサイクリングコースを開発・案内している。
  • 体験はキャンセルが多いので、あえてキャンセルしやすい体験を多く用意している。部屋代が高額である代わりに、アクティビティは無償で提供することが多い(アクティビティで利益を上げることはせず、部屋代に含めている)。
  • 体験の内容は全て明らかにせず、来てからのお楽しみという要素もあるとよい。イメージを前面に出し、内容がわからないようにすることでスピリチュアルな雰囲気を持たせておく方が好まれる。

富裕層の受け入れにあたっての課題 

  • お客様の受け入れはホテルだけでできるものではない。宿泊客の要望を受けて、地域の様々な施設がそれに対応できるかどうかがポイントになってくる。
  • 富裕層を理解するため、彼らが泊まるホテルに自ら宿泊してみたり、富裕層が好むレストランでも食事をするようにしている。ニーズを汲み取って、適切に早く対応する力が必要になる。人材育成も課題である。
  • 富裕層のお客様は見た目の美しさに対する要望も高い。
  • 日本のコンシェルジュと海外のコンシェルジュの違いを感じることがある。海外のコンシェルジュは、デスクから離れずに仕事が完結するが、日本では自分が動かなければならない。例えば、お客様が病気になった時に、なかなか外国人を受け入れてくれる病院がなく、ホテルスタッフが付き添って、通訳をしなければならないことも多い。海外の場合は、ホテルドクターシステムを利用すれば医師が往診してくれる。
  • また、お客様がたくさん買ったお土産を発送したい場合、日本では発送にかかる作業をコンシェルジュが行うことになるが、海外では、商品の写真を送るだけで、代理で処理してくれるパーソナルショッパーというサービスがある。
  • 他にも、劇場のチケットのプリンタがコンシェルジュデスクに置いてあり、すぐに発券ができるようになっている。日本では、新幹線の切符が必要になった際に、わざわざ駅まで買いに行かなければならない。

2.ディスカッション

対談後は、富裕層の視点をふまえて、各自で自社のサービスや商品の問題点・課題の洗い出しを行いました。ゲストのお2人にも各グループを回っていただきながら、課題を共有し、最後に全体に向けた発表もおこないました。

開催後のアンケートでは、

「改めて、富裕層向けサービスを行うことの緊張感や大変さを感じました。得るものが本当に多い回でした。第二弾心待ちにしております!」
「世界の富裕層の話が聞けて、スケールの違いを知ることが出来た。」
「初めて参加しましたが、とても良かったです。ゲストのお二人の話しも、あっという間に感じました。トークセッションでは、初めてお会いする方々のストレートな意見を聞ける事は、すごい機会をいただいていると思いました。時間は、もう少し余裕があったら、もう少し色々な事を話せたとも思いましたが、時間が足りないと思える事で、次のステップに自ら向かう事が出来るかもしれないとも思いました。数あるセミナーに今まで参加してきましたが、有意義な時間だったと実感出来ました。」

といった感想をいただきました。

次回の「第4回京都インバウンドカフェ」は、2月9日(木)開催予定です。引き続きご注目ください。

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