京都観光モラルワークショップ(第2回)
~課題解決につながるアイデア出し~

UPDATE :
2021. 09. 20

この記事は、京都観光行動基準(京都観光モラル)の普及啓発を目的とした業界ワークショップの結果についてお伝えする連載記事です。

第1回:観光モラルについての理解を深める
第2回:課題解決につながるアイデア出し
第3回:事前発表会
第4回:発表会

”マナー啓発”と”モラル啓発”の違いについて説明

第1回のワークショップでは、参加者からマナーとモラルの違いに関する質問が挙がりました。
そこで、第2回のワークショップではまず、「マナー啓発」と「モラル啓発」の違いについて、事務局である京都市観光協会より説明しました。

マナー啓発について

ENJOY RESPECT KYOTO ステッカー

マナー啓発

「●●しないでください」といったような適切ではない行動や振る舞いを防ぐ対策

コロナ禍以前、京都市ではごみのポイ捨て、路上喫煙や立入禁止区域への侵入など京都市内の観光において、適切ではない行動や振る舞いが多発しており、市民生活にも大きな影響を及ぼす事態が生じていました。
こうした観光課題を解決するため、京都市観光協会ではピクトグラムを活用して、どの国籍の人にもマナーを分かりやすく伝えることを目的とした「ENJOY RESPECT KYOTO ステッカー」をはじめ、啓発リーフレットの「AKIMAHEN」の配布など様々なマナー啓発に取り組んで参りました。

ENJOY RESPECT KYOTO ステッカー

モラル啓発について

京都観光行動基準(京都観光モラル)

モラル啓発

地域貢献や質の高いサービス、環境保全の促進、災害対応など前向きな取組み

通勤時間の混雑緩和を目的に乗客に対して混雑時間帯以外の乗車を促すためのポイント付与サービスといった鉄道会社の取組みや、食べ歩きをする客が他の客の服を汚してしまうことがないようにイートインコーナーを設置する商店街の取組み、また不審者に遭遇した際に助けを求めることができるような場づくりをしたホテルの取組みといったような、事業者にとって、観光客にとって、市民にとって嬉しいと思える前向きな取組みがモラル啓発と言えます。コロナ禍以前、様々な観光課題を抱えていた京都市が以前の京都観光に戻さないようにするために策定した京都観光モラルもモラル啓発の取組みの一例と言えます。

京都観光行動基準(京都観光モラル)

様々な立場から観光モラルについての理解を深める

第1回のワークショップでは参加者が京都観光モラルとは何かを理解していただくことを目的に「観光地におけるゴミの取り扱い」に関する架空のエピソードを題材として、京都観光モラルに反する不適切な「行動」や「振る舞い」について、各登場人物の立場に立って考えてもらいました。

第2回のワークショップでは
「事業者の立場から見て、観光客や市民にしてもらえると嬉しいこと」
「観光客の立場から見て事業者や市民にして貰えると嬉しいこと」
「市民の立場から見て観光客や事業者にして貰えると嬉しいこと」

以上の3つの立場から、”して貰えるしいこと”を京都観光モラルの4つの行動基準(地域文化・コミュニティへの貢献/質の高いサービス/環境・景観の保全/危機対応・レジリエンス)に沿って、まずはひとりで書き出し、その結果をグループと共有し、グループとしての結論を出しました。

このワークの狙いは以下の2点です。

  • 様々な立場から見て、”して貰えるしいことを意識することで、モラル啓発にとって何が必要か考える
  • 様々な立場からモラル啓発を意識することで、本ワークショップの目的である京都観光モラル実践の一歩を踏み出すきっかけとなる普及啓発ツールのアイデアの一助とする

各グループの意見 「事業者の立場」から見て観光客や市民にして貰えると嬉しいこと

地域文化・コミュニティへの貢献 質の高いサービス
  • 伝統行事や神社仏閣の維持
  • 地元のお店で購入してもらうこと
  • 不安や困りごとを伝える場所づくり
  • 感謝の言葉
  • 地元ガイドや観光案内所の利用
  • 部屋の清潔な利用
  • 観光客への親切な対応
環境・景観の保全 危機対応(レジリエンス)
  • 積極的な景観保全への関与
  • シーツ・タオル交換省略への協力
  • ゴミの持ち帰りの協力
  • 旅行の際の非常時に向けての備え
  • 地域の防災訓練への参加、防災情報の発信・交換

各グループの意見 「観光客の立場」から見て事業者や市民にして貰えると嬉しいこと

地域文化・コミュニティへの貢献 質の高いサービス
  • 市民と交流機会の創出
  • 訪問先の文化・歴史情報の発信
  • 親切丁寧な接客
  • 駅で案内するロボットの設置
  • FREE WiFiの設置
環境・景観の保全 危機対応(レジリエンス)
  • ゴミ箱の設置
  • 綺麗な公衆トイレの設置
  • 観光地のイメージを壊さない外観作り
  • 非常口の案内
  • 災害情報の発信
  • 多言語災害情報サイトの作成

各グループの意見 「市民の立場」から見て観光客や事業者にして貰えると嬉しいこと

地域文化・コミュニティへの貢献 質の高いサービス
  • 混雑する時間を避けた来訪
  • 市民に対する観光客の配慮ある行動
  • 市民優遇サービスの実施
  • 転売目的の買い占め防止
  • 行列を作らない工夫
  • 市民生活を尊重するツアーの実施
環境・景観の保全 危機対応(レジリエンス)
  • ゴミをポイ捨てしない
  • 観光地と生活エリアの分割
  • ポイ捨て防止を目的としたゴミ箱の設置
  • 市民や観光客を店舗/施設にて保護
  • 店舗/施設における避難経路の提示

ディスカッションの様子

京都観光モラルの普及・啓発ツールのアイデア出し

立場によって、”して貰えると嬉しいこと”は大きく見え方や感じ方が変わり、モラル啓発にとって何が必要か意識することができたところで、本ワークショップの目的である京都観光モラル実践の一歩を踏み出すきっかけとなる普及啓発ツールのアイデアを個人で出していただきました。

アプリを使ったアイデア

キャッチコピー アイデアの内容
親切ポイントアプリ 事業者、市民、観光客同士でのコミュニケーションや親切な対応をした際の利用を想定。スマホのアプリを使って表示されたモラルに相応しい行動について、実践した者同士が評価を行う。評価によって親切度のランクが上がったり、クーポンに交換したりすることを可能とする。
渋滞見える化、見えちゃってスムーズ 地名を検索すると、渋滞情報が表示されるようにすることで渋滞緩和を目指す。将来的には、宿泊情報なども取り入れたい。
危機一発 台風や地震の災害時に使える危機管理サイト。災害に対する危機意識を持ってもらう。また、QRコードを読みとることで、京都の最新情報も得られる。
観光地数珠繋ぎスマホスタンプラリーカード 数珠繋ぎで「あるく京都観光」をしてもらうためのアプリ。利用者の位置情報を基に、近くのおすすめ観光地が表示され、交通機関を使わずに旅行してもらえるようにする。各ポイントにはQRコードが設置されており、読み込むとその観光地のウラ情報を読むことができ、アプリ内に設置されているカードにはスタンプが貯まり、貯めると景品がもらえるという仕組み。
混雑状況お知らせアプリ 混雑している場所や状況を避けて行動できるアプリ。地図上に表示されて一目で混雑状況がわかるようにする。落ち着いている時間にお店を利用するとサービスを受けられる。

クーポンを使ったアイデア

キャッチコピー アイデアの内容
エコ風呂敷で観光モラル向上 観光案内所や交通事業者の窓口で販売する。観光客や市民が、風呂敷の裏面のQRコードやバーコードを印刷し、お店のレジで読みとったら特典がもらえる。
おひとり様でおこしやす 旅行者が一人で宿泊するプラン。混雑緩和や京都のファン化を目指す。
「京都への宿泊を伴う一人旅〜京都に一人で旅をするのがかっこいいというライフスタイルの提案」
一人旅のメリットは、本当に自分の行きたいところに行き、やりたいことができることであり、より外の世界に意識が向くので、旅行に没頭できる。結果、地域文化を尊重する気持ちが育まれ、地域経済への貢献にもつながる。事業者にとっては、おひとり様向けの商品やサービス、または優遇プランを考案できる、市民にとっては、おひとり様旅行の方が地域への負荷が少なく、地域との交流が生まれるといったメリットもある。宿の予約時におひとり様予約(ワード要考案)と記入すると、おひとり様証明書をもらえる。
SDGs向上の地域クーポンを活用 SDGsや環境を意識したモラル啓発で、ホテルや旅館が観光客にクーポンを発行。連泊時、ホテルのシーツを取り替えないことでもらえるクーポンを市内全域で使える仕組みを作る。
ゴミクーポン 観光地でリサイクルを意識したゴミ捨て行動を取った観光客に、手軽に交換可能なクーポンを配布する。

コミュニケーションを促すアイデア

キャッチコピー アイデアの内容
コミュニケーションをエコバックで 事業者、観光客、市民、それぞれカラーを決め、観光客向けのバッグには多言語でデザインし、マナーに関する絵や災害時の連絡先やURL などをプリントし情報発信に繋げる。同じデザインのエコバッグをお互いに持つことによって、観光客を歓迎している人と観光客とのコミュニケーションのきっかけとなることが期待できる。
忍法××の術 明るい雰囲気で挨拶をすることによって、観光客をコミュニティに巻き込む事ができ、当事者意識を植えつける。ペンライトのような光る棒を持ち、振り回しながら声を出して挨拶をしたり、相手に感謝を伝える意味で手裏剣を投げるといったように、観光客を歓迎する気持ちを伝えることを、子供たちに楽しみながら身につけてもらえるようにする。
モラル向上シンボルマーク:ピクトサイン ピクトサインをシンボルマークとして作り、ステッカーやポスターを配置することで「排泄行為の禁止を促すため電柱に小鳥居を付ける」といった京都ならではのモラル啓発を行う。「幼少期教育における地域でのモラル向上」や「モラルや道徳に欠ける行為の自制」また「外国人をはじめとした異文化の方への理解促進」を図る。
観光モラルロールプレイング授業 京都市内の小学校高学年の授業で市民、観光事業者、観光客のそれぞれの立場で劇を演じてみて、それぞれの立場におけるモラルに対する感じ方を体感する。観光理解への啓発活動を行うことで、市民の観光理解促進に繋げる。

最終発表に向けた普及・啓発ツールアイデアの選定

次に、各々が挙げたアイデアに対し、参加者がそれぞれが実現したいと思うアイデアに投票し、最終発表に向けたグループ分けを行いました。

第3回ワークショップに向けて

第3回ワークショップでは、新たに組んだグループでそれぞれのアイデアについてプレゼンテーションの準備をしていただくこととし、とくに以下の点を意識してグループワークに臨んでいただくことを確認しました。

  • ターゲット(誰に対して)の具体化
  • 仕掛け(面白さやインセンティブ等)の工夫
  • 実現可能性(コスト面等)の検証
  • 各メンバーの自職場での展開や活用方法

まとめ

第1回のワークショップでは、「観光地におけるゴミの取扱い」について架空のエピソードをテーマにどのような「行動」や「振る舞い」が問題であるか、という ”粗探し” の視点を中心に議論をしましたが、今回のワークショップでは「して貰えると嬉しいこと」に焦点をあてて、事業者・観光客・市民の3つの立場からモラルを意識したポジティブな取組みについて考えていただきました。次回、第3回のワークショップでは今回決定したアイデア案を実現させるため、ターゲットや仕掛け、コスト面等より具体的な議論に入っていきます。
各グループのアイデアがどのような形になるのか次回のレポートではその内容の一部をご紹介いたします。

この記事は、京都観光行動基準(京都観光モラル)の普及啓発を目的とした業界ワークショップの結果についてお伝えする連載記事です。

第1回:観光モラルについての理解を深める
第2回:課題解決につながるアイデア出し
第3回:事前発表会
第4回:発表会

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