調査結果のポイント
このたび、京都市観光協会は、京都観光に関わる事業者および従事者を対象にした調査を行いましたので、その結果を発表します。この結果は、令和3年3月に策定された「京都観光振興計画2025」における指標の一部として活用されます。
なお、今回の調査は、定点観測の起点となる調査であるため、過去との比較ができない一部の指標については、来年度以降に行う定点観測結果との比較をもって評価することとし、集計結果の記載のみにとどめております。今後も継続して調査を行うことで、京都観光振興計画2025に基づいた施策の進捗と成果の把握を行ってまいります。
京都観光事業者実態調査
調査時期 | 令和3年12月から令和4年1月にかけて |
調査対象 |
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調査方法 | インターネットアンケート |
標本数 | 212社 |
主な回答項目 | 業種、従業員数、人件費、観光客からの売上が占める割合、2019年と比較した場合の2020年および2021年の売上、主力商品の売価と原価の変化、京都観光モラルに関する取組状況、観光客や京都観光がもたらす効果・影響についての認識 |
調査結果の主なポイント
非正規雇用比率の平均値は42.3%と、全国平均の37.2%を上回った
観光業界212社からの回答によると、従業員数に占める非正規雇用者の割合は平均して42.3%となった。これは、調査手法・対象が異なり参考値であるが、全国平均の37.2%(総務省労働力調査2020年)を上回る水準である。ただし、非正規雇用比率の分布のばらつきは大きく、0%と回答した事業者が約2割を占める一方で、90%超と回答した事業者も全体の約1割を占めており、事業者によって雇用状況はまちまちであることには留意が必要である。
コロナ禍前の2019年と比較した観光売上は、2020年に約6割減、2021年はさらに約2割減となった
観光売上(観光客への売上)について、コロナ禍前の2019年を基準(基準値100)とした場合、回答事業者における2020年の平均値は38.6で、コロナ禍前から約6割減となった。また、2020年を基準とした場合の2021年の平均値は76.3で、2020年からさらに2割以上減少した。
2020年は売価を下げる事業者が多かったが、2021年は売価の上昇に踏み切る事業者が増加した
主力商品の売価と原価について2019年から2020年の変化を聞いたところ、売価を下げた事業者が約4割を占めており、逆に原価が上がったと回答した事業者も約4割を占めたことから、利益率を下げた事業者が多かったものと考えられる。同様に2020年から2021年の変化について聞いたところ、原価が上がったと回答した事業者は引き続き約4割を占めたが、売価については上げたと回答した事業者のほうが下げたと回答した事業者を上回った。原油高などによる長引く原価上昇や、コロナ禍による需要の減少で薄利多売の販売戦略が通用しにくくなっている状況に対応するために、売価を上げる判断を行った事業者が増えたものと考えられる。
過半数の事業者がコロナ禍前の従業員数を維持しているが、総人件費を減少させた事業者も過半数を占めた
従業員数と総人件費の変化について聞いたところ、コロナ禍前の2019年の従業員数を2021年時点で維持(もしくは回復)していた事業者が占める割合は64.1%と過半数であった。一方で、総人件費については、2021年時点でも2019年を下回っていると回答した事業者が53.4%を占めた。一人当たりの人件費を、2019年を基準として比較すると、2021年における回答事業者の平均値は98.2となり、まだコロナ禍前の水準を回復していない。従業員の雇用は維持しつつ、人件費の削減を行っている事業者が比較的多いと言える。
京都観光従事者実態調査
調査時期 | 令和3年10月5日~8日 |
調査対象 | 京都市観光協会が実施した新型コロナウィルスワクチン職域接種の来場者 |
調査方法 | 会場で配布したチラシに記載した二次元コードを、各自のスマートフォンで読み取ると表示される画面に従って回答。 |
標本数 | 198名 |
主な回答項目 | 性年代、居住地、雇用形態、役職、勤務年数、週あたり勤務時間、京都観光モラルの取組状況、仕事のやりがい、2019年と比較した場合の2020年および2021年の収入 |
調査結果の主なポイント
回答者の過半数は2019年よりも2020年の収入のほうが低く、平均収入は15.9%減少した
観光業界の従事者198名に聞いたところ、2019年の収入と比較して、2020年の収入が下がった人が回答者全体に占める割合は53.6%となった。2019年から2020年にかけての収入の増減率の回答者平均は15.9%減であった。
2019年当時の収入と2021年の収入が同じ水準と回答した人が約7割
2021年の収入は、2019年と同じと回答した人が69.1%にのぼった。当時の水準を下回っている人が約1割いる一方で、定期昇給などもあって収入が増加している人が約2割おり、収入の変化は様々である。ただし、この集計結果では、コロナ禍の影響で観光業界から離職した人の存在が考慮されていないことには留意が必要である。
仕事に対するやりがいを感じている人は多いが、その業務を他人にも勧める意向は比較的低い
仕事に対するやりがいについて11段階評価で回答してもらった結果、過半数の人が上位3段階を選択した。他業界などでの比較可能な調査結果が無いため相対的な評価は難しいものの、コロナ禍においても観光業界で従事を続けている人は、やりがいを感じている人が多いと考えられる。しかしながら、その業務を他人に勧める意向について11段階評価で回答してもらったところ、やりがいについての回答結果を1.8段階分下回った。多様な人材が集まる魅力的な業界を作っていくためには、このやりがいと推奨意向の乖離を埋めることが必要である。
「京都観光モラル」に関する取組意欲は、事業者と比べて従事者のほうが低く、個人単位での意識啓発に課題か
京都市および京都市観光協会が令和2年度に発表した京都観光行動基準(京都観光モラル)に関する取組意欲について、事業者調査と比較したところ、従事者の取組意欲のほうが全体的に下回る結果となった。全く同じ取組項目について比較しているわけではないので、単純な比較はできないものの、個人単位での取組意識の啓発のほうに課題があると考えられる。
観光業界に勤めていても普段京都観光をしない人は約2割を占め、コロナ禍で観光の頻度はさらに低下
普段から京都観光をほとんどしないと回答した人は、コロナ禍前時点で16.2%を占め、コロナ禍以降は34.8%に達した。業界の従事者による観光機会の減少が進んでいると言える。
お問い合わせ先
公益社団法人京都市観光協会 マーケティング課 堀江
075-213-0070